LilacFantasy - Ragna Stone_01

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Ragna Stone

森に囲まれた王国、リルフォレス。5884年もの長い時を、この国は過ごしてきた。寿命の短い人間にしては、随分長い年月だと思う。

そのリルフォレスが、20年前、突然精霊界と同盟を結んだ。理由は公開されていないけど、精霊界の王サマから歩み寄った同盟だったらしい。精霊たちが王国内を自由に行き来できるようにする代わりに、精霊側が王国を守ってあげる。人間側にとっては願ってもないことだっただろう。周囲の国々は精霊の力を恐れて戦を仕掛けては来ないし、王国内で起こった事件は精霊側の警察隊が解決してくれるのだ。もっとも、あたしは同盟が結ばれた理由を知っているのだけれども。これは機密事項なので、あえて触れないでおくことにする。

とにかく、この20年間で、人間界で暮らす精霊の数はかなり増えたし、人間による精霊への偏見も減った。もちろん、その逆も。寿命が長いが故のんびり平和な精霊界とは違って、せこせこ過ごす人間界はいい刺激になっているらしい。中には人間と精霊のロマンス…なんてものもあるらしいけど。これは、はっきり言って極めて稀な例だと思う。

とにかく、そんな人間と精霊が共存する時代、あたしは人間界にやって来た。退屈な精霊界とおさらばするために。ここから先は、あたしが人間界で体験した、ちょっと、いや、かなり大変だった冒険談を語ろうと思う。

***

あたしの名前はウィンディ=ウィルディア。19歳。精霊界光の王国出身の、風の下級精霊である。

下級精霊というのは、精霊の中で最もランクが低く、見た目は人間とほとんど変わらない。しばしば、人間と下級精霊はどう違うのだと訊かれるのだが、大いに違うので覚えておいて欲しい。

まず、根本的に種族が違う。人間とは比べ物にならないくらい魔力が高い。たとえ魔法が苦手なヤツがいたとしても、根本的な魔力は人間の比ではない…はず。人間より体力がないとも言われているが、あたしの周りには何故か体力バカが多いので、これはガセなんじゃないかと思っている。

そして、魔法。人間は精霊から力を借りて魔法を発動させる。一人一人魔法源(マジックソース)というものを持っていて、その属性によって使える魔法が変わるのだとか。一方精霊は、自分の力で魔法を発動させる。故に魔法詠唱時間が短いのが特徴なのだ。つまり、人間は精霊から魔法をレンタルしている、ということになる。ちょっと難しいかな。

最後に、寿命である。人間の平均寿命はおよそ60歳。中には100歳以上というバケモノ級もいるが、それは魔法の力を借りてる人がほとんどである場合が多い。一方精霊には、寿命という概念がない。あたしの遠い祖母であるシルフィードなんて、世界創造のときから存在しているくらいだ。外見的老化は、人間で言う20代から30代ほどで止まり、その後はほぼ同じ姿で存在することになる。まぁ、やっぱり例外もいるんだけどね…。

下級、中級、上級と、試験を受けるたびに上がっていき、最終的にはフェアリーテイルに出て来るような「精霊」となれるのだ。正確には下級の中でも何段階かあって、教育課程を終えた下級精霊は、人間界に行ってもいいことになっている。

だからあたしは人間界にやって来た。誰も自分を知ることのない、未知の世界へと。

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